三十代のあいだ、下着はモンベルのジオラインL.W.一択だった。汗をかいても瞬く間に乾き、身体をドライに保ってくれる合理性は、スキーでも登山でも完璧だと信じていた。
ところが、四十代が視界に入ってきた今、自分の身体にはっきりとした異変を感じている。気温がとりわけ低いわけでもない。暖房の効いた部屋にいるのに、足元や腰回りがじわじわ冷える。あれほど頼りにしてきた化学繊維のドライさが、今の自分にはいささか冷淡すぎるように思えるのだ。
そうして、これまで避けてきたはずのメリノウールが視野に入ってきた。ウールは乾きが遅いし重い——それが長年の自分の理屈だった。けれど、天然素材だけが持つあのじわっとした発熱と、一度温まったら容易には逃さないしぶとさは、まさに今の自分が切実に求めているものだ。
過酷な運動中にどう振る舞うかよりも、日常のふとした瞬間に忍び寄る嫌な冷えをどう消すか。そこに重心を置いたとき、これまで築き上げてきた装備体系を、根本から見直す必要が出てきた。
自分の身体の変化を認めるのは、少し寂しくもある。それでも、今の自分に最もしっくりくるものを、改めて選び直す。もしメリノウールが期待どおりの仕事をしてくれるなら、それはこれからの十年を共に歩む、新しい相棒になるはずだ。
