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Gear Story / 2026-02-09

フリースがまだ黄金だった頃の記憶

R2からR4へ、レギュレーター・システムが残したもの

フリースがまだ黄金だった頃の記憶

パタゴニアのフリースを語るとき、数字は避けて通れない。Rの横に並ぶ1から4の記号。それが山での立ち回りを、旅の機動力を規定していた時代があった。

レギュレーター・システム。

素材の細分化が進んだ現在では、通気ならこれ、風を凌ぐならこれ、とひとつずつ選ぶ手間が増えた。あの頃はもっと単純で、熱を帯びたラインナップが整然と並んでいた。

最高傑作は、やはりR2だろう。動物の毛皮を思わせる長い毛足。ポーラテックのサーマプロが暖かい空気をこれでもかと抱え込んでくれた。それでいて、編み目はスカスカだった。光に透かせば向こう側が見えるほどで、熱がこもればチャックを下ろすだけで一気に冷気が流れ込む。脇下にはR1と同じ格子状の生地が配され、動くたびに余計な熱を捨ててくれた。止まれば暖かく、動けば涼しい。矛盾を形にしていたのは、間違いなくこの二番だった。

R3はもっとストイックな存在だった。さらに長い毛足が圧倒的な保温力を生む。その代わり、とにかく嵩張った。当時のタイトな立体裁断も相まって、中に何を着るかを慎重に選ばないと、途端に動きを制約される不器用さがあった。やがて軽量なダウンや化繊インサレーションが台頭し、中間着としての座を真っ先に明け渡すことになった。

野心作と呼べるのはR4だ。フリースが風を通すという弱点を埋めるべく、生地のあいだに防風の膜を挟み込んだ一着。風を完全に遮る安心感は確かに大きかった。けれど代償として、フリースの柔らかさが損なわれた。ゴワついた着心地に加え、動けば内部に自分の熱で湿気がこもる。乾きにくいという欠点もあり、今ではウィンドシェルやソフトシェルがその役割を担っている。

R2だけが伝説として残った理由は、とりあえずこれを選んでおけばいいと思わせる安心感にあった。防風に振り切ったR4や、暖かさだけに特化したR3は、特定の場面では頼もしかった。R2とR3、その決定的な違いはやはり動けるかどうかに集約される。嵩張りと重さを抱えたR3に対し、シェルを羽織れば暖まり、脱げば軽やかになれるR2のしなやかさこそが、最大の武器だった。

2021年、そのR2が廃盤になった。理由を突き詰めれば、素材の進化による役割の分担ということになるのだろう。通気に特化したR1 Airや、表面を強靱にしたR2 TechFaceへ、その魂は分割して引き継がれた。合理的な判断なのは承知している。けれど、予測のつかない日々が続く旅のなかでは、一着ですべてを賄えたあの曖昧な万能さが、何よりも愛おしかった。

今の山道には、アルファダイレクトやオクタといった、より軽く乾きやすい素材が並んでいる。毛玉だらけになった旧型のR2は、もはや最前線のギアとは言いにくいのかもしれない。

それでも、あの毛むくじゃらのフリースを纏い、冷たい空気のなかで自分の体温を感じながら歩いた記憶は、どんな素材を重ねても、消えることはない。